京都大学法科大学院 平成24年度 |
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科目名:公法総合1[Public Law (Advanced) I] | 担当:仲野 武志 | 区分: 基幹科目 | ||
配当年次: 2 | 開講期: 前期 | 曜時限: 火2 | クラス数: 3 | 単位: 2 |
概要
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「行政救済法」と呼ばれる分野について判例の状況を概観すると共に、判例で問題とされている個別行政法規の仕組みや行政法一般理論についての理解を深める。「行政救済法」は「行政争訟法」と「国家補償法」に大別されるが、授業の進行もこの順序で行う。 すなわち、まず、行政訴訟の典型である「取消訴訟」について、その訴訟要件及び判決の効力について扱った後、その他の行政訴訟類型、審理・仮の救済の順にとりあげ、行政不服審査を含めた行政争訟法の全体像を理解する。 そして、国家補償法については、国家賠償と損失補償に分けて主要な判例を取り扱う。 なお、「行政法総論」と呼ばれる分野について、既修者は学部段階で、未修者は前年度の「行政法の基礎」で、その概略について既に習得していることが前提とされるが、「行政法総論」と「行政救済法」は有機的に連関している。公法総合2では、改めて「行政法総論」の問題をとりあげることとしているが、そこでは公法総合1での学修を前提としたより深い理解が期待される。 |
授業形式
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双方向・多方向形式による。判例を中心とする事例を素材にして授業を行うが、判例の蓄積の乏しい事項については、法律の規定や学説を素材にする。各テーマについての十分な予習が望まれる。 |
授業内容
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1.取消訴訟の対象(1)取消訴訟の対象は最も論議の多い問題の一つであり、その対象と認められるか、すなわち処分性が認められるかは、実体法の規定に加えて、関連する国民の権利・利益の性質、別の機会における争訟提起の可能性等に係る複雑な問題であるが、ここでは、まず、処分性の一般的な定式と、これに該当せず処分性を否定された裁判例、例外的に処分性を肯定された裁判例を中心に検討する。 2.取消訴訟の対象(2) 引き続き取消訴訟の対象を検討し、特に、一連の行政過程の最終段階以前の段階で行われる行為の処分性に係る問題を中心に検討する。更に、いわゆる「形式的行政処分」に係る問題を検討する。 3.取消訴訟の原告適格 これも最も論議の多い問題の一つである原告適格について、学説の理解を深めると共に、裁判例の流れを、具体的事案に即して検討する。 4.取消訴訟の訴えの利益 訴えの客観的利益(狭義の訴えの利益)について一般理論の理解を深め、具体的な場合に訴えの客観的利益が認められるかは、関係する実体法の規定上、当該処分がどのような位置づけを与えられているかに係っているので、具体的な裁判例に即して、問題を検討する。 5.取消訴訟の判決 取消訴訟における判決に係る諸問題を検討し、取消訴訟における判決の効力について理解を深める。 6.行政訴訟の諸形式(1) 取消訴訟以外の行政訴訟の諸形式のうち、無効等確認訴訟、不作為違法確認訴訟、義務付け訴訟、差止訴訟、当事者訴訟(確認訴訟を含む)とその利用方法について検討する。 7.行政訴訟の諸形式(2) 前回に引き続き各訴訟形式について検討するとともに、いわゆる客観訴訟のうち住民訴訟にも言及する。 8.行政訴訟の審理・仮の救済 違法判断の基準時、証明責任の分配、執行停止、仮の義務付け、仮の差止、仮処分の制限などの問題を検討する。 9. 行政訴訟と行政不服審査の関係 行政不服審査法の基本構造を分析したのち、原処分主義と裁決主義、審査請求前置主義などの問題を検討する。 10. 国家賠償法1条に基づく責任(1) 公権力の行使についての広義説、違法性についての職務行為基準説などの問題点を検討する。 11. 国家賠償法1条に基づく責任(2) 不作為の違法、損害論、因果関係論、費用負担者などの問題を検討する。 12. 国家賠償法2条に基づく責任 瑕疵概念、行政の守備範囲論、自然公物論などを検討する。 13. 損失補償 特別犠牲の概念、財産権の内在的制約に概念、事業損失などの問題点を検討する。 14. 行政救済法の全体像 |
成績評価方法等
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筆記試験の成績を基礎として、5点以内の範囲で平常点を加味することがある。なお、4回以上授業を欠席した場合には、単位を認めない。 |
リサーチペーパー
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無
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教材
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教科書:高木光・稲葉馨編『ケースブック行政法』(第4版、弘文堂、2010年) 参考書: 授業中に指示する |
到達目標
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行政法の基礎、公法総合2の前半と合わせた到達目標は、「法科大学院における共通的到達目標モデル(第二次修正案)」と同一である。それぞれの授業内容と自学自修すべき事項の振り分けについては、到達目標・目次と平成24年度シラバスにおける対照表(別添)を参照すること。
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その他
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