京都大学法科大学院 平成25年度 |
|
科目名:刑法総合2[Criminal Law (Advanced) I] | 担当:塩見 淳 | 区分: 基幹科目 | ||
配当年次: 2 | 開講期: 後期 | 曜時限: 金2 | クラス数: 3 | 単位: 2 |
概要
|
本科目は、刑法総論・犯罪論のうち共犯の部分と刑法各論を範囲として、解釈論上または実務上特に重要な問題について重点的に学ぶことを目的とする。その際、近年の判例および学説の展開と、立法に関する議論にも留意する。 |
授業形式
|
双方向・多方向形式による。判例を中心とする事例を素材にして授業を行う。 各テーマについての十分な予習が望まれる。 |
授業内容
|
1.正犯と共犯(1) 正犯と共犯は、2回に分けて授業を行う。第1回は、正犯の概念を検討し、間接正犯・共謀共同正犯の成立範囲、および、正犯と従犯との区別を取り上げる。さらに、個別の問題領域にかかわる論点として、共同正犯については、片面的共同正犯、共犯と錯誤、過失と共同正犯、承継的共同正犯、共犯関係からの離脱、そして、狭義の共犯については、幇助の因果性、不作為と共犯、共犯と身分について議論する。最後に必要的共犯の成立範囲を検討する。 2.正犯と共犯(2) 第2回は、第1回で検討できなかった残された論点を取りあげる。 3.事例による検討 具体的な事例を設定し、判例・学説に関するこれまでの知識を応用してどのように解決されるべきかを検討する。これにより知識の単なる記憶を超えた一層の定着及び深化を図ることを目的とする。 4.自由・名誉に対する罪 生命・身体に次いで重要な法益として位置づけられている自由・名誉に対する罪のうち、主要なものを検討する。逮捕・監禁罪、略取・誘拐罪、住居侵入罪においては、いずれも保護法益の理解が中心的な問題である。名誉毀損罪に関しては、名誉の概念、公然性、真実性の証明・誤信をめぐる判例・学説の議論を検討する。 5.財産犯の基本概念 財産犯の領域には多くの犯罪類型が含まれるが、それらに共通する問題も少なくない。ここでは、財産犯の保護法益、財産犯の客体、所有・占有の有無と限界、不法領得の意思、および、財産的価値のある情報の保護に検討を加え、個々の犯罪の成立範囲をどのように画していくのが適切かについて、財産犯全体の見地から横断的に論じる。 6.強盗の諸問題 強盗罪自体の成立に関わる論点、例えば、恐喝との限界づけ、暴行・脅迫と奪取との因果関係、暴行・脅迫後の領得意思、2項強盗における利得の意義などとともに、事後強盗罪や強盗致死傷罪も多くの難しい問題を含んでいるところから、それらも併せて取りあげて考察する。 7.事例による検討 具体的な事例を設定し、判例・学説に関するこれまでの知識を応用してどのように解決されるべきかを検討する。これにより知識の単なる記憶を超えた一層の定着及び深化を図ることを目的とする。 8.詐欺・恐喝の諸問題 財産犯は「犯罪」ではあるが、特に交付罪の類型では、通常の取引活動と境を接するような形態も少なくない。ここでは、不公正な行為と詐欺・恐喝行為の問題として、相当対価の提供、権利行使と財産犯、不作為による詐欺、人を困惑させる行為と恐喝、また、処分行為に基づく財物・利益の移転として、処分行為の有無にかかわる諸問題を検討の対象とする。 9.横領・背任の諸問題 委託物横領罪と背任罪とは、他者からの財産的信頼に違背して加害利得する罪である点で共通する。両者の類似と相違とに留意しながら、横領罪については、物の他人性、不法領得の意思、横領行為、背任罪については、事務処理者、図利加害目的、任務違背性、財産上の損害の要件をそれぞれ検討する。最後に、両者を包括する論点として、横領と背任の区別の問題を取り上げる。 10.事例による検討 具体的な事例を設定し、判例・学説に関するこれまでの知識を応用してどのように解決されるべきかを検討する。これにより知識の単なる記憶を超えた一層の定着及び深化を図ることを目的とする。 11.放火の罪 公共危険犯の典型である放火罪を取りあげる。公共の危険・焼損の意義、建造物の現住性・一個性などの要件について、放火をとりまく状況の変化にも留意しつつ考察する。また、放火の着手時期についても、同罪に固有の問題もあるところからとくに取りあげることにする。 12.文書偽造の罪 各種の偽造罪のうち、特に文書偽造罪を取り上げ、中心的な問題である、文書性、有形偽造の概念、行使の概念を検討対象とする。具体的には、通称使用、同姓同名の他人の存在を利用した肩書の冒用、替え玉受験や交通違反の場合における法的権限のない者の承諾に基づいた文書作成など、近時の判例で議論されている問題を重点的に取り上げる。 13.公務執行妨害罪・賄賂罪 国家的法益に対する罪のうち、公務執行妨害罪と賄賂罪を取り上げる。公務執行妨害罪については、公務の適法性、時間的範囲などをめぐる諸問題、賄賂罪については、職権概念、賄賂罪については職務の概念および賄賂性をめぐる諸論点の検討を行う。特に職務行為に関しては、転職後の収賄の問題や、一般的職務権限や職務密接関連行為など本来的職務の周辺に位置する行為の問題などに留意する。 14.事例による検討 具体的な事例を設定し、判例・学説に関するこれまでの知識を応用してどのように解決されるべきかを検討する。これにより知識の単なる記憶を超えた一層の定着及び深化を図ることを目的とする。 |
成績評価方法等
|
筆記試験および平常点による。平常点は筆記試験の成績にプラス・マイナス5点の範囲で加味する。 なお、4回以上授業を欠席した場合には、単位を認めない。 |
リサーチペーパー
|
無
|
教材
|
教科書: 中森喜彦・塩見淳編『ケースブック刑法(第2版)』(有斐閣、2011年) 「事例による検討」で用いる事例は、事前にネット〔教育支援システム〕を通して配布する。 参考書: 授業において指示する。 |
到達目標
|
上記「授業内容」記載の各項目についてその内容を具体的に説明できるように理解して、上記「概要」記載の成果を得ることである。 「刑法」関係の基礎科目と基幹科目を通じての到達目標については、別に掲載する「京都大学法科大学院の到達目標」(刑法)のとおりである。 |
その他
|
|
■時間割表へ ■履修登録科目一覧へ | ||
「京都大学法科大学院 平成25年度」のトップページへ | ||
法科大学院HP | Westlaw Japan Academic Suite V2.7/2013(C)T.Kakuta |